昨日、ちょろっと医療的な記事を書きましたが、調子に乗って今日ももう1つ(私は、一応医療技術職なのです)。

最近、乳児にはちみつを食べさせ、ボツリヌス症で乳児が亡くなるという事故がありましたね。「ボツリヌス菌は筋肉を麻痺させる」くらいしか書いてないのですが、どういう事なのでしょうか。

筋肉は、神経からの信号で動きます。神経は電気で信号を伝えるのですが、電線のように電流が流れる訳ではありません。神経は、周りを髄鞘という脂質による絶縁体で被われていまして、ところどころにくびれがあるんですが、そのくびれを、イオンの流れにより電気が跳躍するように信号を伝えるのです(跳躍伝導と言います)。

そうして、信号が神経と筋肉が繋がる部分まできたら、神経の末端から「神経伝達物質」というのが発射されます。精神疾患であれば、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンという伝達物質の名前は聞き覚えがあるかも知れません。これらは、脳の神経伝達物質です。抗うつ薬や抗精神病薬の多くは、これら脳内の伝達物質に何らかの作用を及ぼす薬ですよね。

筋肉における神経伝達物質は、アセチルコリンです。アセチルコリンが神経末端から発射され、それが筋肉に届く事で、筋肉細胞に信号が伝わるのですね。

ボツリヌス菌は、このシステムのうち、神経末端からアセチルコリンが発射されるという作用を妨害します。結果、筋肉が麻痺する事になるのです。

毒素ではなく、病気で同じような障害が起こる場合もありまして、イートン・ランバート症候群というのがあります。ただ、ものすごく稀な疾患らしく、私は20年病院で働いていますが、イートン・ランバート症候群の患者は、一度もみたことがありません(人口100万人に2~3人、という頻度らしいですよ)。

アセチルコリンを発射する神経末端ではなく、アセチルコリンを受けとる筋肉側の受容体に問題が出てくる場合もあります。筋肉のアセチルコリン受容体が、自己免疫(アレルギーのように、自分の組織に対して免疫反応が起こり、自分で自分を攻撃してしまう事)で壊される病気が、「重症筋無力症」です。

ちなみに、昔地下鉄サリン事件というのがありましたね。あのときに使われたサリンも、このアセチルコリンに関わる化学物質です。しかしサリンは、アセチルコリンを伝わらなくするのではありません。アセチルコリンは、筋肉まで届いたら、速やかに分解されるのですが(じゃないと、筋肉が働きっぱなしになりますからね)、サリンはこの、アセチルコリンが分解されるのを妨害します。結果、重症の痙攣が起きて、死に至るのです。

先日起こった、金正男さんの殺害事件で使われたらしい「VX」も、サリンと同じような働きをする有毒化学物質で、サリンよりもっと強力なのです。

また、上の説明に書いた「髄鞘」が壊される病気もあります。これは「ギラン・バレー症候群」と言い、これも自己免疫の病気だと言われています。フグの毒であるテトロドトキシンも、ここを障害する事で致命的な呼吸筋の麻痺が起こります。

なお、筋肉が麻痺して動かなくなる病気で他に有名なものとして、筋ジストロフィー(何種類かあるが、デュシェンヌ型が有名)と筋萎縮性側索硬化症(ALS)があります。筋ジストロフィーは、筋肉自体が壊れていく病気で、ALSは、脊髄の中にあって、運動神経の通路である「側索」が硬くなり、信号を伝えられなくなる病気です。どちらも、最後はやはり呼吸筋の麻痺で亡くなる事が多いです。呼吸も筋肉でしますからね。

いかん、真面目な記事を書いたら、知恵熱が……(笑)。

妻は今日も低空飛行で、ちょっといらいら気味のようです。今日は初夏の陽気でしたし、4月の好調がなかなか戻らないのがいらいらに拍車をかけているのかもしれません。

でも、落ちた調子は必ずまた元に戻りますからね。焦らない焦らない。 にほんブログ村 メンタルヘルスブログ 躁うつ病(双極性障害)へ
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